整形して美しい女に生まれ変わり、着々と復讐を果たしていく市村ハナ。
前回は絢子のパシリでいじめた事実さえ忘れていた百子を、幸福の絶頂から女郎屋という地獄のどん底へ突き落としました。
今回は小石川菜穂子として復讐相手に近づき、3番目の復讐を果たします。
作品名:「美醜の大地~復讐のために顔を捨てた女~」
作者:藤森治見
「美醜の大地」第三話「私は特別」あらすじとネタバレ
奥田スミ子の罪
奥田スミ子は女学校の頃、「不細工な顔」とハサミでハナの顔を切り、足蹴にした挙句にひどい言葉を投げつけた。
自分は美しい、特別である、という意識が昔からある女だった。
その後、目立つ美人のスミ子は、カフェでウェートレスとして働き始めると客から「美人だね!」と褒めそやされる看板娘になった。
ニッコリ笑うだけで欲しいものは何だって手に入るのだ、とスミ子は腹の中で笑う。
薄気味悪いストーカーが現れる
カフェで働くのが楽しくて仕方ないスミ子の毎日に、一点のシミを落とす存在が現れた。
いつもやってくる、薄汚い身なりの醜い不気味な男・中川。あまりの気味悪さに、同じ空気を吸っていることすら厭わしい。
コーヒーの注文を取ることすら苦痛で、ブ男につきまとわれることにスミ子はうんざりしていた。
しかも、毎日毎日、ラブレターを寄越し、内容はスミ子の行動を監視して会話まで書かれている。
気持ち悪くて、さすがのスミ子も元気がなくなる。
スミ子の顔色が悪い、と心配する菜穂子。
自分と同じ美しい特別な人間である菜穂子なら、わたしの苦しみを理解してくれるに違いない、とスミ子は中川につきまとわれていることを相談する。
そして自分のファンである喫茶店の常連客たちに頼んで、中川をボコボコにしたが・・・
「美醜の大地」第三話の感想
今回復讐されたのは、美貌を鼻にかけるタカビー女・スミ子でした。
美しい私は特別、というかなりのナルシスト体質です。
醜かったころのハナをいじめ、自分に対して好意をもってくれた醜男に対しても情け容赦のない制裁を加える冷酷な女性。
中川は自動車修理工場で働いており、家族もなく、外見も醜いことは自分でも理解しており、スミ子との恋を成就させたいという高望みはしていなかったのが最後で描かれています。
カフェで見たスミ子の美しい笑顔に惚れて、見ているだけで幸せだったという中川が、愛するスミ子のためになけなしのお金をはたいて高価な香水を買い、プレゼントしようとしただけなのにひどい目にあわされてしまいます。
さらに、スミ子自身から侮辱されて逆上して犯行に及んでしまったんですね。ストーカーは気持ち悪いですが、これはかなりかわいそうでした。
ハナの復讐の巻き添え、というよりはスミ子本人に問題があって、ハナが手を出さなくてもいつかこうなってしまったんだろうな、と思えるやり方でした。
裏で糸を引いていたハナは、スミ子を精神的に追い詰めるために捏造ラブレターを送っていました。
ただ、ハナとしてはスミ子の自慢の顔をボロボロにしてやった時点で復讐を終えており、まさかスミ子が追いかけてくるとは思っていませんでした。
計算外でスミ子が命を落としてしまったことに、ハナの心に動揺が生まれてしまいます。
次回は、とうとうハナの宿敵である高島津 絢子が姿を現します。